繋いだ歌【完結】


皆、静かに僕が歌い終わるのを待っていた。
頭を下げたのを皮切りに、大きな拍手が体育館中に響く。


それに僕はぎょっとした。


「よかったぞ! 来栖!」
「ファンになった」


そんな声がして、僕は笑顔でステージを降りたんだ。


ああ、緊張した。
もう二度と経験したくないや。

楽しかったし、喜んでもらえるのは嬉しかった。
だけど、ハッキリとわかった。


僕は僕の曲を自分で歌って披露するのには違和感を感じてしまうってことを。


うん、やっぱりボカロに歌わせよう。
そして、もう二度と自分で歌うのはやめよう。


文化祭が終わり、僕の歌を聞いてくれた話したことがないクラスメイト達や先生までもが僕に一言声をかけてくれた。
田所は聞いてくれたのだろうか。

ちゃんとお礼を言いたいな。
もう帰ってしまっただろうか。

教室に戻った僕は田所を探した。下級生の教室から田所の声がして、そこに近付いた時だ。
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