たぶん、トクベツちがいな恋。
・・・
珠理のパーティーも終盤に近づいて、用意していたたこ焼きやピザはほとんど形もなく消えた。
生地が固まってしまうから、たこ焼き器だけを洗おうと台所へ持っていく。水で流して、大きな汚れだけ取り除いていると、さっきと同じように、また、影ができる。
…さっきよりも、大きな影だ。
「…珠理」
隣に目を向けると、マグカップを2つ分持ったオネェ男子が立っていて。
「洗い物ありがとう。近海にやらせてばっかで、ごめんね」
「……」
トン、と、すぐ横に、俺のマグカップが置かれる。
「なんでこっち持ってきてんの。つーか、中身なに?」
「ティーラテ。勝手に作っちゃった」
「ふーん…」
手を拭いて、マグカップを受け取ると、目の前のツクリモノみたいな顔がふと緩んだ。
そのまま、2人で台所のシンクに腰を預ける。
「…なんか、女の子同士の話、始まっちゃったみたいだから」
「…」
長くて重そうな睫毛が、揺れた。ほんのりと青みがかかった珠理の目は、リビングにいる3人の女の子を映している。
「なんだよ、入ればいーじゃん。そういう話は好きだろ、お前」
俺には散々、めごちゃんとの話をしてくるくせに。両想いになった日、徹夜で惚気を聞かされたのを、今でも忘れてないからな。
「ムリよう。あーいうのには、アタシは入っちゃダメなのよ。ちゃんと、女の子同士で話す時間もつくってあげないと」
「…ふーん」
そんなもんなのか。俺には、正直分からない。でも、そういうところまでかんがえられるのが、きっと珠理の長所でスゴイところなのだ。きっと。