たぶん、トクベツちがいな恋。
『茶々ちゃんが本気なのに、それでも付き合うっつったアイツもアイツだけどさ。こうやって泣いてんのも、肝心の珠理は知らねーんだろ?』
多分、苛立ちの方が強かったんだと思う。自分が一目惚れしてしまった子が、親友と付き合っていて。
それなのに、幸せそうだとも言えないこの状況が、俺を苦しめていたんだと思う。
でも、茶々は……——
『珠理の悪口を言うのはやめてよ…!』
…きっと、俺にこんなことを言われてしまう方が、きっと辛くて。
『なんで付き合ったかなんて、好きだからに決まってんじゃん! 珠理が欲しかったからに決まってんじゃん!』
『茶々ちゃ…』
『あたしがそれでも良いって言ったの!好きな人がいても良いって言ったの!あたしがしつこいから、珠理は良いよって言ってくれたの!悪いのはあたしなの…!』
『…』
“ だから二度と珠理のことを悪く言わないで ”
…その言葉を最後に、茶々の叫びは消えた。
ものすごい迫力に、俺は何も言えなかった。
大きく揺れている肩に、また胸が締め付けられた。
『…でも、隠れて泣いてんのに、何とも思わねーなんて、無理だよ』
思わず、本音がこぼれた。
それでも茶々は、全然動じなくて。
はぁ、と息を吐いて、一度、ギュッと目をつむった。次に目を開いた時には、長い睫毛が、かすかに揺れた。
『あたしは、好きな人の前ではちゃんと笑っていたいの。弱いところなんて、見せたくないの』
『…』
『だから、こんなことで泣いてることなんか、珠理は知らなくていい。言わなくていいの』
彼女のこぼす言葉1つ1つが、心に刺さった。この時が初めてだった。
茶々の“ トクベツ ” が、あいつの前で笑うことだって知ったのは。
珠理の知らない顔を、俺は知っている。でも、茶々にとっては全然特別なんかじゃないんだってこと。