“あなたを愛しています”





小川夫妻が式の準備に入ったことを確認して、私は披露宴会場の最終チェックと司会者との打ち合わせに入る。

きちんと並べられた装花に、シャンパングラス。

ナイフやフォーク。

そして、引き出物と席札を席次表と照らし合わせて確認する。

めでたい席であるから余計にミスが許されない、ミスなんてあってはならないと思う。

だから私は、細心の注意を向けるのだが……




その場所に来て、気付いてしまった。

ようやく気付いた。

部屋の中ほどの円卓の席札には、こう表記されている。


『桜庭 司 様』



< 132 / 353 >

この作品をシェア

pagetop