“あなたを愛しています”





ホテルの廊下は走らない。

それは基本中の基本だが、頭が真っ白の私はそんな基本も守れなかった。

ただひたすら、頭の中で警告音が聞こえる。



「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……」




ヤバイことは分かりきっている。

ちらりと時計を見ると、あと十五分後には新郎新婦再入場の時間だ。

それまでに、何としてもブーケを探さないといけない……

けど……林さんのいない今、ブーケは見つからないかもしれない。





慌てる私は、ブーケなんてあるはずもない、披露宴会場の扉を開いていた。

あまりにも激しく開いたものだから、扉の近くに座っていた男性たちが驚いて私を見る。


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