“あなたを愛しています”





我ながら、何て馬鹿なことをしているのかと思う。

俺の体重に軋み、不吉な音を立てる縄に怯えながら、ゆっくりと壁を蹴って下へ降りる。






そんな俺を……






「お兄ちゃん、何してはるの!?」




久しぶりに聞くその声が呼んだ。




うわっ、バレた!!





驚きのあまり、縄を持つ手を緩めてしまった。

その瞬間……





ドスッ。




身体に衝撃が走る。

どうやら俺は動揺して、地面へと落ちてしまったらしい。





「いてて……」




太ももをさする俺に近寄り、



「お兄ちゃん……相変わらずあほやなぁ」



困った顔で言う。

そんな彼女を、



「菜々子ちゃん……」



泣きそうな顔で呼んでいた。


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