“あなたを愛しています”




菜々子ちゃんに釘付けとなる俺の前に、もう一人の女性が現れる。

ほんわり巻いた茶色い髪に、優しげなその顔。

彼女を一目見るだけで、胸がきゅーっと痛くなる。

俺は、見ず知らずの女なんかと結婚したくない。

結婚するなら、彼女しか駄目だ。





「花奈ちゃん……」




その名前を口にした瞬間、泣きそうになった。

大好きな花奈ちゃんをぎゅっと抱きしめて、もう離さないように頰を寄せたいなんて思う。




そんな花奈ちゃんが、どうしてここにいるのだろう。

もしや、幻?

俺、二階から落ちて死んでしまったとか!?



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