“あなたを愛しています”





涙を流す母親から、目が離せない。

この人は……次は何を言うつもりだろうか。

さらに司君を傷つけるつもりなのだろうか。

だけど……彼女は涙を零しながら、切なげに父親にすがりつく。




「司の言う通り、うちらが司の楽しみを奪うてました。

思い出しとおくれやす。

あんたにも、結婚前に恋仲がいてはりました。

せやけど願いは叶わず、うちと結婚しました。

司にはこないな辛い思いをして欲しゅうあらしまへん」





言っている意味は分かるのに、



「要約すると、この人もお見合い結婚で辛かったって言ってるんだよ」



司君が余計なことを言う。

だから父親に、



「黙りんさい!!」



と怒鳴られていた。



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