ほんもの。

店員さんがやって来て、ドリアが置かれる。次に安藤が注文したハンバーグステーキがテーブルに並ぶ。

ごゆっくりどうぞ、と伝票が透明なケースに入れられた。

はあ、と安藤が手の甲を目元につけて溜息を吐いていた。何を嘆いているのか。

「急にどうしたの? え、肉嫌なの? ドリアと交換する?」

「違う、あー全然違う」

じゃあ一体何なのか。私はフォークとナイフを差し出す。
安藤は受け取り、少し遠い目をした。

それを見て、ちょっと心配になる。

「月白こそ、なんで急に部長の話したんだよ」

「私はさ、安藤みたいにはなれないから」

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