ほんもの。

コツコツとドリア皿を叩いて、一口分を耕す。開いたところから湯気が出て、とても美味しそう。

「は? 意味が分からん」

「安藤みたいに、過去のことに興味ないとか。思えないの、私は」

「へー」

「安藤はそういうとこ、結構冷たいと思う。人の気持ちにあんまり寄り添ってくれない」

同じように一口に切ったステーキを見て、安藤が黙る。

言い過ぎたかな、とその表情を見つめた。

「……やる」

そのステーキがドリアに添えられた。

「え、ありがとう……ってそういうことじゃないよ?」

「分かってる」

安藤はステーキを口に運んでいく。

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