ほんもの。

お言葉に甘えて、安藤の家に来た。
久しぶりに来たけれど、変わった所はない。

「あ、鍋持ってくれば良かった」

キッチンに立つ安藤の後姿を見て言うと、安藤が振り向いた。

「鍋?」

「土鍋」

「ああ、土鍋。確かに、鍋食べたい」

安藤は寒くなると常日頃鍋を食べたくなる体質なのかもしれない。

私はテーブルに肘をついてテレビを見た。週末ロードショーで邦画がやっている。

あんまり面白くない。
でも、

「あんどー、あんどーの好きな女優が出てるよ」

「録画して頂きたく」

「はーい」

録画機能が動き始めたのを確認して、チャンネルをまわしていく。

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