ほんもの。

完全に母に支払ってもらうつもりだったので、今全然持ち合わせがない。

ファストフードなら買って帰れるかな、くらいだ。

財布の中身を思い出して、メニューから目を逸らす。

「ごめん、私いいや。こういう高いものはちょっと」

「今出たら絶対あのひと達に捕まるけど、それで良いなら帰れば?」

「私はこの彩御前にしようかな」

けろっと決断を翻して、私は指をさす。安藤は自分の分とともに注文してくれた。
もう普通に会社の雰囲気だ。

「安藤って彼女いないの?」

「月白にそれを言われたくないし、いたらこんな場所に連行されてない」

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