ほんもの。

安藤が置いてあったメニューを広げる。

「……安藤さんの家って、旅館経営だったんですね」

「敬語やめろ。月白だって月白グループの一人だろ」

「うちは分家だから。辛うじて父が月白の系列店の会社に勤めてるくらい。兄も私も関係ないとこだし」

「どうでも良い。何食べんだよ」

聞いてきたのはそっちなのに。
反論はせずに、広げられたメニューを覗き込む。わー、天ぷらとかある。たっか!

分家の分家である私の家は一般家庭と同じなので、料亭でご飯を食べるなんて今まで無かった。
母も行っちゃったしなあ……いや待って、もしかして帰っちゃった?

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