ほんもの。
そしてあの顔を思い出す。
安藤は根本的に他人に興味が無いように思う。あんまり関わったことのない私にもそれは分かる。
「どうするって?」
「一生このままは無理だろ。部長が離婚するとか、そういう目処は立ってんの?」
「無理ではないと思うけど」
安藤がこちらを見た。私はその奥の美しい日本庭園を見ていた。
雪が降ればきっと、もっと美しい景色になるだろう。
「現実的ではないよね」
「答えになってない」
安藤は厳しい、と思う。
それを考えたことが無かったと言えば嘘になる。でも三島さんと会うようになって、そんな話は一度も出ない。