ほんもの。
私も言ってて同じことを思った。
駅までだと思ったけれど、安藤はきちんと家まで送ってくれた。
「ありがたい、神様仏様安藤様」
「勝手に神仏と並べんな」
「じゃあまた会社で」
ああ、という返事。行ってしまう車を見送って家に入ろうとすると、玄関から母が出てきた。
とても言いたいことが沢山あるけれど、もう疲れたので今度思い出したときにしよう。
母は私を見ると「もう帰ってきたの?」と目をパチクリさせた。
「安藤さんは?」
「送ってくれて、帰った」
「家に上がってもらいなさいよー、折角良いお茶用意したのに」
唇を尖らせている。