ほんもの。

母は先に帰っているらしく、私は完全にアシを失った。

「俺は車あるけど、月白は?」

「電車かな」

「乗ってくか?」

その誘いを待っていた。流石にここから駅まで向かうのは距離がある。
わーい、とその言葉にも甘えてほいほいと着いていく。

「わー……」

なんだよ、と面倒くさそうに安藤がこちらを見た。

駐車場に停まっていたのは高級車だった。そうでした、この人お坊ちゃんだったんでしたね。

「安藤って旅館継ぐの?」

「いや、弟が継ぐ。もう結婚してるから」

「安藤も良い人に出会えると良いね」

「その言葉、そっくりそのままあんたに返す」

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