ほんもの。

ワインの香りも取れたし、何も食べてなかったから更にぶり大根が美味しく感じられたし、安藤の家に来て良かった。

「さっきからうるさいんだけど」

「え」

ソファーに座っている安藤がリビングの扉付近に置かれている鞄を顎で示す。ここまで持ってきてくれたらしい。
私は箸を置いて、その鞄に近付く。確かにバイブ音が鳴っている。

「三島さんからだ」

「出なくて良いのか?」

電源ボタンを長押し。画面はすぐに真っ暗になった。

「今はちょっと、話せない」

それは奥さんのこともあるし、何より私は安藤のもとへ逃げ込んでしまった。
後者の理由が大きい。

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