ほんもの。

そこで気付く。私が安藤に付いてきて欲しかったのは、そういう理由で、だ。

結局私は傷つけても、傷つきたくないから、こうしている。

「遅くなってごめん」

やってきた三島さん越しに見えた壁時計は時間ぴったりを示していた。
善良な人だ、と思う。

私とこういう関係だったこと以外は、きっと。

「待ってないです」

「何か頼んだ?」

首を振る。三島さんは近くを通った店員さんに声をかけてコーヒーを2つ頼んだ。

「この前は、ごめん」

「いえ、こちらこそ……」

言い淀む。こちらって、どちらだ。
私が、私だけが悪いの?

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