ほんもの。

それも、ついさっき聞いた気がする。
自分の口から。

「……あ、ありがとう。がんばる」

「良い人ってなんだよ? まず、顔が良い?」

まあ、うん。それもあるだろうね。

「頭が良い、家柄が良い」

「うん、あの……」

「『良い男がいる』けど。目の前に」

輪郭を撫でられた。
目の前、確かに目の前にいるけど。

私はその場所から逃れようとして腕を立てるけれど、無駄だった。その手を掴まれる。

「私は、顔が良いからとかそんな理由で、安藤を選んだりしないし」

安藤は一瞬きょとんとした顔をして、ちょっとはにかんだ。今日、よく笑ってる。

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