白馬に乗った上司様!?
資料室での内緒の話
「西春さん、ちょっといい?」

翌日、昨日使った資料を返そうとファイルを抱えた私の背後から旭野主任が声をかけてきた。

「はい。あ、でも、これ資料室に返してきてからでもいいですか?」

「あー、いや。そのまま、持ったままで来てくれる?」

「ーーはい」

不思議なリクエストだけど急ぎなのかもしれないと考えて、主任の後について近くの会議室に入った。実際、取引先との約束の時間が迫った営業さんは「とりあえず」と用件だけ言って出かけてしまう人も少なくない。

「あの主任、何か‥‥‥え?」

今回もきっとそうだろうと、部屋に入りつつ話し出した私の言葉は途中で止まってしまった。視界の先にいるはずのない、菊里課長の姿が見えたからだ。

「ああ、突然すまないね。とりあえず重いだろうから、そのファイル降ろして」

どうやら偶然居合わせた訳ではない上に、この場の主導権は菊里課長にあるらしい。旭野主任は課長の言葉に頷いて、少し後ろに下がった。

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