白馬に乗った上司様!?
この声は中村さんと総務課の女の子だ。私がいる事に気付いてないんだろう。

「それにさぁ、西春さんってなんか影薄くない?いるんだかいないんだか、声も滅多に出さないしぃ」

「ちょっとぉ、それ言い過ぎー。」

ケラケラと笑いながら続けられる会話に、分かっていたくせに気持ちが沈んでいくのが止められない。
のろのろと着替えながら聞き流して、静かにロッカー室を出た。




化粧直しをしようと寄ったトイレで、鏡を前に自分の姿を観察する。

くせのある髪は広がりやすいので肩下まで伸ばしていつも後ろでひとつにまとめただけ。顔だって地味で印象的じゃないし、プロポーションもごく普通。中村さんみたいなキラキラした女子感はちっともない。

良く言えば普通、悪く言えば平凡。いや、普通も平凡も女性の形容詞としては良くないか。

「分かってても実際に言われちゃうとヘコむなぁ」

したくもない再確認を済ませてため息を吐くと、私は軽い化粧直しを終えて退社した。
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