白馬に乗った上司様!?
「女性としては確かに上手じゃないかもだけどさ、人としては違うんじゃない?」

「人として、ですか?」

「うん。西春さんってさ、ここの料理みたいじゃないかと思って。派手さはないけど、丁寧に誠実に生きてる」

思いがけない言葉に机の上に並べられた料理達を見た。

目を引く盛り付けも豪華な食材も使ってないけれど、出汁を取るところから手を抜かずきちんと作られたそれらは食べた人の心にまで伝わる美味しさだ。

「食べる人に優しい料理、だと思わない?」

「そう、ですね。……ありがとうございます」

課長の言葉と気持ちがすんなりと心に染み込んで、今度は素直に感謝の言葉が出た。

あの会社で働ける事が嬉しくて、真面目にコツコツと努力を重ねてきた。人の目にとまる事はなかったけれど、誰かに評価される為にしてるんじゃないからって自分に言い聞かせて、納得してやってきたはずだ。

それでもやっぱり、認められるのは嬉しい。
褒められてから初めて気付いたけど。

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