誰かがどこかで救われる

「不正禁止ー。すみやかに移動しなさい」
いつの間にか担任の先生が教室の後ろに立っていて、そんな言葉を投げかける。

不正したいよ。
三週間もガマンできるかな。

机を引きずりながら移動してると、すれ違いざま実花に「中原君のリポよろしく」って言われてしまった。

私は実花のパシリじゃないよっ!
ムッとするけど
顔に出すとまた面倒。

めんどくさい
本当に色々と面倒だよ。

それぞれが自分の席に着き
あらためて声が高くなる教室。

ユリとモコが私の顔を見て、教室の真ん中で手を振る。
ふたりは隣同士なんだ
いいなぁ。

実花は一番前だけど
両隣に同じ部活の仲間がいるし

萌ちゃんの後ろは武田さんで、ふたりはアニメ大好きだから気が合うだろう。武田さんも萌ちゃんに似ていて大人しいけど優しい人だから、萌ちゃんも楽しく三週間過ごせそう。

そして私は……。

「伊田の制服がポッキーの匂いする」

「するわけねーだろ。触んな平子っち」

「伊田の超高速スパイクくらうぞ」

「中原の顔にバシッと当ててやれよ」

「平子っちさぁ、一昨日歩きながら牛丼食べてたっしょ」


早く

三週間経たないかな。

< 10 / 131 >

この作品をシェア

pagetop