誰かがどこかで救われる
「不正禁止ー。すみやかに移動しなさい」
いつの間にか担任の先生が教室の後ろに立っていて、そんな言葉を投げかける。
不正したいよ。
三週間もガマンできるかな。
机を引きずりながら移動してると、すれ違いざま実花に「中原君のリポよろしく」って言われてしまった。
私は実花のパシリじゃないよっ!
ムッとするけど
顔に出すとまた面倒。
めんどくさい
本当に色々と面倒だよ。
それぞれが自分の席に着き
あらためて声が高くなる教室。
ユリとモコが私の顔を見て、教室の真ん中で手を振る。
ふたりは隣同士なんだ
いいなぁ。
実花は一番前だけど
両隣に同じ部活の仲間がいるし
萌ちゃんの後ろは武田さんで、ふたりはアニメ大好きだから気が合うだろう。武田さんも萌ちゃんに似ていて大人しいけど優しい人だから、萌ちゃんも楽しく三週間過ごせそう。
そして私は……。
「伊田の制服がポッキーの匂いする」
「するわけねーだろ。触んな平子っち」
「伊田の超高速スパイクくらうぞ」
「中原の顔にバシッと当ててやれよ」
「平子っちさぁ、一昨日歩きながら牛丼食べてたっしょ」
早く
三週間経たないかな。