誰かがどこかで救われる

「中原君も?今日はバスケ早いね」
顔を見られると恥ずかしいので
私は早口で言い
靴を履きかえてカバンから折りたたみ傘を取り出した。

「今日は整骨に行くから早めに上がったんだ……心愛ちゃん……傘持って来たの?」

「あ……うん。降るかなって思って」

「入れてくれる?」

「え?」

「走ろうかどうしようか悩んでたんだ。走ってまた足が痛くなっても嫌だし」

「一緒に?」

「うん。近くのショッピングモールの中にあるんだ整骨院。あ、ごめん僕と一緒なんて嫌だよね。ごめんね」

慌てて言われたので

「嫌じゃないよ」って
もっと慌てて返事をして



私と中原君は
ツーショットでひとつの傘で下校する。


< 63 / 131 >

この作品をシェア

pagetop