誰かがどこかで救われる
距離が近い
中原君は車道側を歩き
傘を持ってくれた。
「もう少し寄っていいよ。やっぱり迷惑だった?」
「ちっ……違うよ。迷惑なんかじゃないよ!」
意識して離れてるので
私の右肩は雨のしずくで濡れていて
それを気付いたのか
中原君は傘を私の方に傾けてくれた。
中原君が濡れちゃう。
私は迷いながら中原君に身体を寄せ
くっつきながらふたりで歩く。
夢なら醒めないで欲しい。
ショッピングモールまで歩いてあと5分
長いのか短いのかよくわからない。
ドキドキしながら歩いていたら
「平子っちと付き合わないの?」ってふいに言われて、段差も何もない場所で転びそうになった。驚きでバランスが崩れたかな。
「危ない」
さりげなく手を貸してくれる中原君。
その仕草がやっぱり王子様。
近すぎる距離なので
背の高い中原君を見上げる私。
中原君は足を止め
「余計なお世話か」と柔らかく微笑んだ。
王子様の優雅な微笑みは、雨の景色と似合ってる。