誰かがどこかで救われる
「気をつけて帰りなさい」
早口でそう言われ
私も早く家に帰りたいので、玄関の扉を押して外と繋がる。
やっと
まともに呼吸ができた。
ゆっくりと扉が閉まる
扉の隙間から見えるのは
いやらしい笑いを浮かべながら、私が帰るのを待ちきれず、杏珠の身体を拘束しようとしている男と、もう疲れ果てて反抗もできない杏珠。
私は子供で
何もできない。
隙間が小さくなって
杏珠が小さくなる
恐怖と絶望が杏珠を包み
杏珠が小さくなってゆく
ドアの隙間が10センチから5センチになって
目の前から私の恐怖は去ってゆく
けれど……。