誰かがどこかで救われる

ずっとずっと
杏珠と手を繋いで私は歩く。

お互い何も言わず歩く。

私が一歩先に出て
杏珠が後ろについている。

私は振り返らない
振り返ったら
きっと一緒に泣いてしまって
一緒に歩けなくなりそうだから

風の冷たさに夜を感じた
星ひとつ出てない空の下
私達はヘンゼルとグレーテルのように
家にたどり着くまで
不安でたまらなかった。

30分ほど歩いて
自分の家の玄関までたどり着き
チャイムを鳴らすと
お父さんとお母さんがそろって出て来た。

お母さんはすっごい怒っていて
扉を開けたらすぐ

「遅い!どれだけ心配したと思ってるの!」と、私に言い。

私はお母さんとお父さんの顔を見て
一気に安心して
ボロボロと涙を流した。

お父さんとお母さんは、私の安心して泣いている表情がわかったのか、ちょっと変だなって思ったみたいで怒りを引っ込め、私の後ろにもうひとり女の子が居る事実に驚いていた。

ふたりの視線が杏珠に流れ
杏珠は涙を拭いてから私の隣に並び

「同じクラスの井原杏珠です。遅い時間に申し訳ありません」って、きちんと挨拶をした。


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