銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「し、仕方ないわね」

照れ隠しにそう答えれば、彼は私の頭を掴んでさらに引き寄せた。

予想外の彼の行動にトクンと高鳴る私の心臓。

「悪いが少しこのままでいてくれ。君のナイトも側で俺を監視しているし、悪さはしない」

「ナイトってウィングのこと?」

ジェイを見上げれば、彼はコクっと頷き面白そうに言う。

「そう。ご主人様思いで賢いな。君が声を上げようものなら、俺に襲いかかる気満々だ」

彼がウィングのことに触れるまでその存在を少し忘れていた。

ウィング、ごめん。

「そ、そうね。ウィングがいるからここは安全よ。だから、安心して身体を休めて」

動揺しながらそう返せば、ジェイは「ありがとう」と私の耳元で囁いて私の頭を撫でた。

私……侵入者にどうしてこんなにも心許してしまうのだろう?

……怪我をしているから?

ううん、違う。

なんて言ったらいいのだろう。
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