銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
彼には抗えない魅力がある。

声音は優しいし、知性もありそうだし、物腰も優雅で育ちも良さそうだ。

どうして兵に追われているのか?

ジェイはひどく疲れていたのか、何も喋らなくなった。

眠ったの?

じっと彼の顔に目を向ければ、静かな寝息が聞こえてきた。

それに、ドクン、ドクンと規則正しい鼓動もする。

「少しでも休んで元気になって」

ジェイの胸に耳を当て、神に祈った。

彼の鼓動を聞くうちに身体が温かくなってきて段々瞼が重くなる。

ダメよ。寝てなんかいられない。

お父様のことも心配だし起きていないと……。

寝ちゃ……ダ……メ……。

そう何度も自分に言い聞かせたが、気づいたら夜が明けていた。



カーテンの隙間から光が差し込む。
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