銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
サーロンはそれを信じて、俺と父を生かしていた。

お陰で俺達がこうして王位を奪い返せた訳だが、次にまたあいつが反逆する時は、迷わず俺達の命を奪うだろう。

辛酸をなめたのだ。

もう言い伝えなど無視するだろう。

俺の部屋に戻ると、ギリアンが緊張した面持ちで口を開く。

「相変わらず不気味な人ですね」

「そうだな。あの目は何か企んでる。いつでも動かせるよう兵の準備を。食糧も準備しておけ」

ふたりに命じると、彼らは「御意」と短く返事をして部屋を退出した。

ふたりがいなくなると、部屋の奥に飾られている自分の肖像画に目をやる。

それは、俺が塔に閉じ込められる前に描かれたもので、髪の色は金髪のままだ。

燃やしてしまおうかとも思ったが、自分への戒めのために飾っている。

いつ足元を掬われるかわからない。

< 147 / 263 >

この作品をシェア

pagetop