銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
薬をじっと見たまま物思いに耽っていたら、彼の素っ気ない声でハッと我に返った。

「それはそうなんだけど……」

この苦いのを一日三回も飲むのは辛い。それに、この薬、匂いも強烈なのだ。

私がやっとのことで薬を飲むと、今度は「次は薬を塗るから」と声をかけ、ジェイは私の寝間着を問答無用で脱がした。

「キャッ」と叫んで慌てて胸を押さえる私を見て、彼はフッと笑う。

「いい加減慣れろよ」

「慣れる訳ないでしょう!」

顔を真っ赤にして怒るが、ジェイは平然としていて
、それが余計に腹立たしい。

彼の冷たい指が肌に触れ、思わずギュッと目を瞑った。

「……やっぱり、これからはクレアに塗ってもらうわ」

ずっとこんな恥ずかしい思いをするなんて嫌だ。

「クレアにこの傷を見られてもいいのか?」

傷口に薬を塗りながら、彼は落ち着いた声で聞いてくる。
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