銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
そう、この五日間で彼はクレアとすっかり顔馴染みになり、彼女のことも名前で呼んでいる。

そのクレアといえば、私の世話をジェイに任せ、何やらギリアン宰相を手伝っているのだ。

何をしているのか聞いても『それは後のお楽しみです』と微笑むばかりで教えてくれない。

「それは……」

言葉に詰まり、目を開けて腕の傷を見た。

彼は……意地悪だ。

確かに……この傷を見たら、彼女は酷くショックを受けるだろう。

私自身、傷の状態を確認して落ち込んだ。

醜い傷跡。

でも、あの時ジェイを庇わなかったら、あの矢は彼に刺さっていた。

だから後悔はしていないけど、……これはクレアには見せられない。

心配をかけてしまう。

本当はジェイにだって見せたくないのだけど……。

「見せられないだろう?もう出血はないが、無理をすれば傷口が開く。もうしばらくはここで過ごすしかないな」
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