銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
どうしたらいいの?

あの男に抱かれるのを待つしかないのだろうか?

そんなの……嫌だ。

私にはジェイしかいない。

彼以外の男に触れられるくらいなら死んだ方がマシだ。

ここで舌を噛み切って死ねば、あの男に抱かれることはない。

そんな考えが浮かんだ時、笛の音が聞こえた。

肌の露出が多い服に身を包んだ踊り子が数名登場して、クネクネと腰をくねらせながら舞をサーロンに披露する。

サーロンは酒を飲みながら満足顔。

周りにいる貴族や護衛も楽しんでいた。

部屋の隅でじっとその様子を眺めていたら、耳元で声がした。

「セシル」

この場にいるはずのないあの人の声。

幻聴?

ゆっくりと声がした方を振り向けば、そこには帽子を深く被り、髪を黒に変えたジェイがいた。

「ジェ……‼︎」

思わず名前を呼ぼうとしたら、すかさず彼に手で口を塞がれた。
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