銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「シッ!静かに」

ジェイは声を潜める。

その目を見てコクコク頷くと、彼は手を離した。

心配になってキョロキョロと辺りを見回すが、みんな踊り子の舞に夢中になっていて、彼が王太子とは気づいていない。

それに、ジェイの味方もここにはいない気がする。

ひとりで潜入したってこと?

大胆不敵というか……、王太子なのになんて危険なことをするの。

こっちがハラハラしてしまう。

「ここに忍び込んで大丈夫なの?」

「まさか俺がひとりで来るとは思ってないさ」

ジェイは微かに笑った。

「どうしてここに?」

朝姿を見なかった彼がここにいるのが気になった。

「脱獄したサーロンの様子を探りに来たんだが、ギリアンからお前が宮殿からいなくなったと聞いて、探していた。どこも怪我はないか?」

「ええ、大丈夫」

そう答えると、彼は安心した顔になる。

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