銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
ジェイに触れたいけど、ここでは出来ない。

彼の正体がバレてしまう。

でも……どうしても触れたい。

そんな自分と葛藤していたら、彼の手が私の頰に触れて、その唇を重ねてきた。

それは、ほんの一瞬。

でも、周りにバレるんじゃないかとヒヤヒヤした。

驚きで目を丸くする私を、彼は愛おしげに見つめてくる。

「今は敵の数が多くて連れ出せないが」

そこで言葉を切り、ジェイは強い眼差しで告げた。

「今宵、お前をサーロンから必ず奪い返す」

その言葉に胸が熱くなる。

ついさっきまで悲観的になっていたのに……。

「続きはお前を救い出したら」

ジェイは私の唇にそっと触れ、そんな約束をすると、姿を消した。

大丈夫。

もう死ぬなんて考えない。

彼が来てくれたお陰で、希望の光が見えた。

「絶対に彼の元に帰る」

サーロンを見据え、小さく呟いた。
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