銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
お父様が処刑されて……お母様が屋敷に火をつけたなんて……。

息がつらい。

でも、立ち止まって休憩してなんかいられない。

疲れて足が絡みそうになりながらも、家路を急いだ。

屋敷のある方角に黒い煙が上がっている。

もう少し近づくと、焦げ臭い匂いがしてきた。

ドレスの袖で鼻と口を覆い、屋敷に向かえば、赤黒い炎が屋敷を包み込んでいる。

それを見て絶望的だと思った。

「屋敷が……燃えてる」

呆然と呟き、私はその場に崩折れた。

ウィングも燃える屋敷を見て悲しそうにクーンと鳴く。

「セシル様……ここにいては危険です。屋敷の者が奥様を助け出そうとはしたのですが、火の勢いがすごくて……。残念ですが……こんなに燃えていては……奥様ももう……」

追いついたクレアが私に外套を着せ、手を貸して立ち上がらせた。

「どうして……どうして……こんなことに……」
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