銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「どうしたの、クレア?」

不思議に思ってこちらから声をかければ、彼女は今にも泣き出しそうな顔で私を見た。

「お、落ち着いて聞いて下さい」

「落ち着くのはクレアの方よ」

冷静にそう返せば、クレアは私の両肩を強く掴んだ。

「……だ、旦那様が国王の逆鱗に触れ、今朝早く処刑されたそうです。それを聞いた奥様はお屋敷に火をつけてそのまま……ううっ」

泣き崩れるクレア。

「う……そ」

彼女の言葉に目の前が真っ暗になる。

「ほ、本当なんです!」

クレアは顔を上げ、悲痛な声で言った。

「そんなの信じられないわ!」

半狂乱で叫び、走って屋敷に戻る。

この目で屋敷を見て嘘だって確かめたかった。

「セシル様、待って下さい!」

クレアが呼んだが、構わず走り続けた。

嘘よ……嘘よ。
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