銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
当時の凄まじさがわかるような気がした。

「なんてひどい……」

涙目になりながら、その文字を指でなぞる。

でも……ジェイはその地獄に打ち勝った。

彼は、本当に強い人だ。

その彼が約束したのだ。

絶対にここから出られる。

窓に目を向け、月をじっと見つめる。

清らかなその光。

「……綺麗ね」

昨夜彼が私に話してくれたことが、ここにいて実感出来た。

月や星が希望の光……。

外に出てその光を眺めたくなる。

その時、月の前を一羽の鳥が横切った。

窓に近づいて夜空を見上げれば、一羽の鳥がぐるぐるとこの塔の周りを回っている。

「あれはジェイが飼っているヒューゴ?」

思わず声を上げれば、その鳥がこちらに向かってやってきた。

鉄格子の窓に降り立ったその鳥は鷹で、クチバシに一輪の真っ赤なバラを咥えている。
< 230 / 263 >

この作品をシェア

pagetop