銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
それに、この人が悪人なら私は今頃彼のナイフで殺されていたはず。

「……大丈夫だ。このくらい……何ともない」

苦しそうなのに男は私を安心させるために笑ってみせる。

やっぱり放ってはおけない。

「大丈夫なんかじゃないでしょう!」

小声で自分よりもいくつも年上のその男を思わず叱りつけた。

彼を助けたくて、自分の寝間着の裾を破り、男の腕に巻きつけて止血する。

「こっちに来て」

男に手を貸して自分のベッドに座らせた。

カーテン越しに外の様子を眺めると、兵はまだうろついている。

「……表にまだ兵がいるみたい。しばらくじっとしていた方がいいわ」

「……お嬢ちゃんは、俺が怖くないのか?」

彼は意外そうに言う。

「お嬢ちゃんじゃないわ。私はセシル。これから社交界デビューするレディーよ」

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