銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
やんわりと訂正して名前を伝えると、彼は甘い声で冗談を言う。

「セシル……か。レディーに相応しい素敵な名前だ。
いつか……ダンスのお相手を願いたいな」

「怪我が治ったらね。あなた……名前は……?」

何て呼べばいいのかわからなくて、男の名を聞いた。

「俺はジェ……ジェイだ」

ジェイは躊躇いながら自分の名前を口にする。

「ジェイ、いい子だからベッドで大人しくしてて」

彼の肩をゆっくり押してベッドに寝かせようとするが、素直に従わなかった。

「いい。気遣いは有難いが、セシルのベッドが汚れる」

ジェイは私の手を優しく掴んで止める。

「怪我人が遠慮なんかしないの!」

悪いと思ったが、自分の体重をかけて強引にジェイを押し倒した。

「うっ……」と顔をしかめるジェイと共にベッドに倒れる。

「……意外と大胆なお嬢様だな」
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