銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「針の筵だったわ。すごく疲れちゃった。こんな豪華なドレスを着るのも久しぶりだったし。ちょっと気分転換に外に出たいから、着替えたいの」

クレアにそう伝えて着替えを手伝ってもらう。

背中にはボタンが五つもあってひとりでは無理なのだ。

「外にってどちらへ?」

「……屋敷がその後どうなったか見ておきたいわ」

宮殿での任務が終われば、もう王都には来ないかもしれない。

「では、私も一緒に参ります」

当然のようにそう言い張る彼女に首を横に振って断った。

「ダメよ。私がいないのがすぐにわかってしまうわ。誰かが来たら具合が悪いとか言って誤魔化して」

「……ですが」

「お願いよ、クレア。あと、あなたの服を貸して。私の服では動きにくいし、目立つから」

クレアに向かって手を合わせると、彼女は溜め息交じりの声で言った。

「日が暮れるまでには帰って来てくださいよ」
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