オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
――コンコン

「……どうぞ」

扉の向こうから聞こえてきた声は想像していた以上に甘めの声でドキっとする。

「失礼します」

挨拶をし扉を開ける。

素早く扉を閉め姿勢を正し「広報部の宮園と申します」と丁寧に一礼する。

するとクスッとだが笑い声の様な声が聞こえた。

あれ?私なんか笑われる様なことしたっけ?

「……昨日とは打って変わって随分礼儀正しいな」

初対面のはずなのにいまいち意味がわからずゆっくりと顔を上げ、イケメンと言われた副社長の顔をみる。

きっちりと整えられた髪型は副社長という風格にふさわしい。

だが、副社長の言葉の意味は理解出来ない。

「あの……恐れ入りますが昨日というのは一体……」

すると副社長はその整った髪の気をくしゃくしゃと崩すと左の頬に手を当てニヤリと笑う。

「昨日はちゃんと帰れたか?」

声のトーンを落としほくそ笑むその顔を見て言葉を失う。

う、嘘でしょ?!

昨日、勢い余ってビンタした、ダメ男がふ、副社長?!

ど、どうしよう。

改めて昨日の行いを思い出し、いや~な汗が出そうになる。

私は咄嗟に土下座するぐらいの勢いで頭を下げる。

「昨日は、副社長とは知らず大変失礼な事をいたしまして本当に申し訳ございませんでした」

穴があったら入ってそこから一生出たくないって気分だ。
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