オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい
まさか本人を目の前に先日のインタビューの原稿で手こずってましたとは言えない。

副社長は私の真意を確かめる様な目でじーっと見つめるが、私がさっと目を逸らしたので諦めたのか小さな溜息を吐いた。

するとスッと手が伸びてきた。

なにかされるのかと思い咄嗟に上半身をかがめるとその手は私にではなく私の横の照明のスイッチだった。

広報室の照明が落ち、一気に暗くなった。頼るのは青く光る非常灯と通路奥のエレベータ前の照明のみ。

怖いとまではいかないが心細さみたいなものがあり、思わず手に持っているバッグを必要以上に強く握りしめていた
するとスイッチを押した副社長の手がスッとしたに下りたかと思うとバッグを持っていない方の私の腕を掴んだ。

「帰るぞ」

「あっ!え?」

私の返事も聞かず副社長は歩き出した。

エレベーターの下りのボタンを押すとすぐに扉が開く。副社長は私の手を握ったままエレベータに乗ると素早く1と閉るのボタンを押した。

扉が閉ると心なしか握られた手の力が緩む。チラリと見上げると安堵したような表情を浮かべる副社長の顔があった。

その顔をみてふと思った言葉が口からでる。

「もしかして……暗いところ苦手ですか?」
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