オオカミ副社長は蜜月の契りを交わしたい

「え?遥姉のこと知ってるの?」

香奈が驚きを露わにし声を掛けたのは私にではなく、私の元カレの智也にだった。

と言うことはこれって偶然一緒だったってこと?

香奈が智也とあったのは1度だけ。それもほんの一瞬。だから香奈は智也のことをきっと憶えていないのだと思う。

ほんの一瞬のことなのに智也は香奈を好きになり私を振ってまで香奈への思いを貫こうといている。

智也はためらいながらも私に視線を向け、意を決した様に「彼女は――」と私との関係を説明しようとした。

だが自分でもどうしてこんなことを言ってしまったのかよく分からないが勝手に久々知が動いていた。

「江口君は大学の時の友達なのよ。ね~江口君」

「……遥」

私の名前を呼ぶ智也は申し訳ないと言いたげだった。

でも智也を助けたんじゃない。

まだ全てを知るには時期が早すぎると思ったからだ。
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