高校生の私と猫。
それから私は、毎日のように電灯に話しかけた。

日が沈む前に帰る日は、まだ明かりがついてないから話せない。あと、友達と帰る日は…内緒だからガマン。


「漢字テストで赤点取って再試験なの…」

チカチカ

――再試験で受かればいいんだよ!頑張って!



「体育大会でどうしても負けたくない子がいて」

チカッチカ

――家に帰ってからも練習してるでしょ。大丈夫!



「弓道でね、射つときに弦で顔を擦る怪我をして。恐怖感があるの」

チカチカチカチカ

――大丈夫。大丈夫。大丈夫。




一度だけ、こんな質問をしたことがある。

「ねぇ、何て呼んだらいい?名前を教えてよ」




少し沈黙があった。

チカッチカチカ

――名前かぁ…わからないや、ごめんね。何て呼んでくれてもいいよ。

「じゃあ、『電灯のお兄さん』って呼ぶね!」

チカチカッ

――ハハハッ、なにそれ~。でも、いいよ!





私は、電灯のお兄さんとのおしゃべりが大好きだった。

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