嘘つきな君
そのあまりにも真剣な声に、周りにいた人達が笑いを止めた。

みんなの視線の先には、私を見つめて微かに微笑む神谷常務だけ。


「まだ就いて間もないにも関わらず、既に私の右腕として働いてくれています」

「――」

「彼女は立派な神谷グループの一員です。変な詮索で彼女をからかうのは止めていただきたい」


低いハスキーボイスで周りを重圧し、温度の感じられない瞳を細めて、みんなを見渡す常務。

黒目がちな瞳が、見た事も無い程、鋭く光っている。

その姿に、周りにいた人達の顔が微かに引きつるのを見た。


「それは、し……失礼した」

「え、えぇ……ごめんなさい」

「そんなつもりは無かったのよ、ねぇ?」


途端に態度を一変して、私に笑顔を向けた人達。

もちろん、引きつってはいるけど。


その、あまりの変わり様に驚いたが。

それよりも、神谷常務の言葉に私の心は奪われていた。


こんな沢山の重役達の前で、なりふり構わず私を庇ってくれた。

あの、常務が。


その姿に。

その言葉に。

何故か、涙が出る程嬉しかった。
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