嘘つきな君
なんとも気まずい空気が流れ始め、ひきつる笑顔で、まるで逃げる様にその場から姿を消していく人達。

次々と去っていく人の後ろ姿を、じっと見つめる神谷常務の瞳は、どこか軽蔑しているように細められていた。

そしてそのうち、残されたのは私達2人だけになった。

途端に、私は小さく頭を下げた。


「すいません……」

「なんで芹沢が謝る」


小さく零れた言葉さえも、しっかりと受け止めてくれた常務。

そして小さな溜息と共に、一口も口をつけていなかったシャンパンをクイッと喉に流し込んだ。


「思った事を口にしただけだ」


淡々とそう言って、泡の上るシャンパンを見つめる彼。

その姿に、思わず抱きついてしまいそうになる。


「私、もう少し秘書らしく振舞います」

「さっきの事は気にするな。酒の場だ」

「でも……常務に恥をかかせたくないんで」

「俺がいつ恥をかいた」


俯く私の元に一歩、歩み寄ってきた常務。

ふんわりと香る、上品なジャスミンの香りに導かれて、ゆっくりと顔を上げた。


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