嘘つきな君
「私……ちょっと、お手洗いに行ってくる」
少しだけ居心地を悪く感じて、重たい腰を上げて店の外にあるトイレに向かった。
コツコツと不規則にパンプスを鳴らしながら、静かな廊下を1人歩く。
ふと視線を横にずらせば、キラキラと輝く夜景が目に入って思わず足を止めた。
まるで大木の様にそびえるビル群には、まだ仕事をしているんだろう、沢山の明かりが灯っていた。
それらを見ると、やりきれない気持ちになる。
「仕事……したいなぁ」
こんなに沢山の人がいて、沢山の仕事があって、世の中が回っているのに。
私だけ何の役目も無くなって、世の中の歯車の中から放り出された。
それが、私自身を否定されたようで胸が詰まる。
仕事をしている時は、休みたいとか、仕事行きたくないとか思っていたのに。
いざ職を失うと、仕事の渦の中に飛び込みたくて仕方なくなる。
まるで社会の輪から外された様で、不安で不安で泣きそうになる。
「こんな時の夜景って、残酷だよな~」
キラキラと嫌味なくらい眩しい夜景を瞳の奥に閉じ込めて、溜息を吐く。
誰にも聞こえないような小さな呟きは、更に虚しさを増した。