嘘つきな君
心ここに非ずな表情で、窓から覗く月を見つめる彼。

だけど、いつもの様な凛とした横顔ではなく、頼りなく揺れる陽炎の様だった。

今にも消えてしまいそうなその姿を見て、グッと拳を握る。

そして、持っていた本をテーブルに戻して、彼の隣にそっと腰かけた。


すると、少しだけ驚いたように視線を私に向けた彼。

その姿を横目に、私も月を見上げる。

ずっと、思っていた事を。


「何か、あったんですか?」


彼に視線を向ける事なく、小さく問いかける。

その言葉に、僅かに彼が驚きの表情を見せた。

その姿を見て、やっぱりと思う。


以前から感じていた、彼の小さな『違和感』

心がどこか他の所にある様な、何かを追い求めて苦しんでいる様な。

そんな姿を、ここ最近不意に見せる事があった。

何かを思いつめている表情を、何度も見せる事があった。


今回の出来事以前から――。
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