嘘つきな君
◇
「もう少しインパクトのあるものを使って頂けますか」
沢山のライトが煌々と輝く眩しい空間の中、私の声を皮切りにザワザワと人が集まってくる。
同じ資料を持った人達と意見を言い合って、よりいいモノを作ろうと額を寄せ合う。
今日は神谷グループが新しく傘下にいれた『シャルル』の新商品のCM撮影だ。
もともと私が担当していたチームのものだったから、今回特別に参加している。
ほとんど私中心に動いていた事もあり、途中で秘書課に移動になったものの、大きいプロジェクトだったから、これだけは最後まで私が担当する事になっていた。
この、どこかピンと張った空気が好き。
1つのものを、みんなで協力して作り上げるこの感じが好き。
「――…では、これでお願いします」
満足のいくものになった事を確認して、みんなの顔を見渡してそう言う。
すると、周りにいた人達も頷いて、元の配置に戻っていった。
「良くなりそうか」
すると、突然私の隣に現れた人が小さく呟いた。
微かに跳ねた心臓を押さえて、前を向いたまま淡々と答える。
「そうなる様に努力します」
「確かに、さっきの画にはインパクトがない」
「私もそう思います」
「――…ここ、もう少し色合いを鮮やかにしろ。ライトで色がとんでる」
「分かりました」
パソコンに映っている映像を指差して、常務がそう言う。
私も同じ事を思ったから、素直に頷いた。