嘘つきな君





「もう少しインパクトのあるものを使って頂けますか」


沢山のライトが煌々と輝く眩しい空間の中、私の声を皮切りにザワザワと人が集まってくる。

同じ資料を持った人達と意見を言い合って、よりいいモノを作ろうと額を寄せ合う。


今日は神谷グループが新しく傘下にいれた『シャルル』の新商品のCM撮影だ。

もともと私が担当していたチームのものだったから、今回特別に参加している。

ほとんど私中心に動いていた事もあり、途中で秘書課に移動になったものの、大きいプロジェクトだったから、これだけは最後まで私が担当する事になっていた。


この、どこかピンと張った空気が好き。

1つのものを、みんなで協力して作り上げるこの感じが好き。


「――…では、これでお願いします」


満足のいくものになった事を確認して、みんなの顔を見渡してそう言う。

すると、周りにいた人達も頷いて、元の配置に戻っていった。


「良くなりそうか」


すると、突然私の隣に現れた人が小さく呟いた。

微かに跳ねた心臓を押さえて、前を向いたまま淡々と答える。


「そうなる様に努力します」

「確かに、さっきの画にはインパクトがない」

「私もそう思います」

「――…ここ、もう少し色合いを鮮やかにしろ。ライトで色がとんでる」

「分かりました」


パソコンに映っている映像を指差して、常務がそう言う。

私も同じ事を思ったから、素直に頷いた。


< 129 / 379 >

この作品をシェア

pagetop